飲食業界で働いていると、長時間労働のため仕事以外の知識がおろそかになりがちです。
社会保険に関しても、なんとなく重要だとは思っているけどイマイチ理解できてないという方も多いでしょう。
そこで今回は
- 求人サイトの社会保険完備の意味がよくわかっていない
- 知らなくてもお金が減るわけじゃないと思っている
- 社会保険って難しそうで敬遠してる
こんな方のために、できるだけシンプルに社会保険について解説していこうと思います。
一度に全てを理解しようとせずに、少しずつイメージをつかんでいきましょう。
今回はその入り口のため、特に重要なポイントに絞って解説していきます。
社会保険とは?
広い意味での社会保険はこれらすべてを指します。
- 健康保険
- 厚生年金
- 介護保険
- 雇用保険
- 労災保険
- 国民健康保険
- 国民年金
たくさんありますが、全てを細かく理解しなくてもOKです。
狭い意味での社会保険は以下の3つです。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 介護保険
イメージがしやすいように図にしてみました。
社会保険は一般的には狭い意味で扱われることが多く、
求人サイトで社会保険完備というのは
「厚生年金と健康保険に加入できますよ」
ということです。
介護保険料を納めるのは40歳からなので、20代30代の方はまず
- 国民年金
- 厚生年金
- 国民健康保険
- 健康保険
この4つの違いと特徴を理解できていればOKです。
知らないとどうなる?
社会保険の内容を理解するということは
- それぞれの社会保険がどのような役割を果たしているのか?
- どんな時にいくらお金がもらえるのか?
を理解することです。
逆に、社会保険の内容を理解していないと
- 本来もらえるお金をもらい損ねた
- もらえると思っていたお金が実はもらえないものだった
ということになりかねません。
最低限の基本だけでもマスターしておきましょう。
国民年金と厚生年金
国が運営する公的年金です。
年金というと「老後にもらえるお金」というイメージが強いですが、年金には
- 障害年金=重い障害を負った時にお金がもらえる
- 遺族年金=配偶者などが亡くなった時にお金がもらえる
- 老齢年金=老後にお金がもらえる
の3つがあります。
この年金の中身を理解していないと
- 不要な民間保険に加入してしまう
- 申請すれば受け取れるお金をもらい損ねる
可能性があるので要注意です。
今回は全員に関わる老齢年金について詳しく見ていきます。
国民年金とは?
20歳以上の国民全員が加入するのが国民年金です。
基礎年金とも言われます。
「将来もらえる保証も無いし、年金払うの意味ない」
といった意見をたまに目にしますが、これは間違った危険な考え方です。
年金を納める現役世代(20歳〜60歳)の人口は減少傾向にあるのは事実ですが、いきなりゼロになるわけではありません。
年金は必ずもらえる。だが将来その額が少なくなっている可能性は高い
というのが正しい認識です。
2022年の現時点で20歳〜60歳まで満額国民年金を納めた場合、
65歳からの受給額は年額78万900円で、1ヵ月約6.5万円です。
この場合74歳まで生きれば納めた総額の元が取れます。
そして83歳まで生きれば納めた額の2倍のお金を受け取れます。
高齢化社会が進む日本では、年金を納めたけど元が取れなかったというのはかなりのレアケースだとわかります。
国民年金を納めないということは、老後の年金だけでなく障害年金や遺族年金を受給する権利すら放棄することになってしまう。将来の自分の生活を守るために年金は必ず納めよう。
厚生年金とは?
一定以上の規模の個人店や会社には従業員を加入させる義務があるのが厚生年金です。
小規模個人店の従業員や短時間のパートタイマーは要確認だが、それ以外のほとんどの事業所に勤める従業員が加入する
というイメージでOKです。
厚生年金の特徴
- 納付額の半分を勤務先が負担してくれる
- 厚生年金加入者は国民年金に加えて厚生年金にも加入しているので受給額が多くなる
厚生年金の受給額の試算方法は様々なサイトで見ることができますが、前提が大企業サラリーマンのことが多くてピンときません。
飲食業界、特に個人飲食店勤務の方は年収が平均よりも低いのが現実ですので、試算も現実的に見てみましょう。
- 20歳から60歳までの40年間厚生年金加入
- 平均年収が350万円(月収約29万円でボーナスなしを想定)
この場合だと65歳からもらえる厚生年金の受給額は
年額約77万円で、1ヵ月で約6.4万円です。
厚生年金加入者は国民年金にも加入していますので、65歳以降は合わせて約13万円の年金がもらえることになります。
「社会保険完備」だと将来貰えるお金が増えるということになります。
国民健康保険と健康保険
この2つは名前も似ていてまぎらわしいですよね。
年金と違い、国民健康保険と健康保険はどちらか1つに加入します。
保障内容にどのような違いがあるのかを理解しておかないと、不要な民間保険に加入してしまう可能性もあります。
国民健康保険と健康保険の違いを理解するためには
- 扶養制度
- 傷病手当金
- 出産手当金
これらの内容をザックリとでいいので理解しましょう。
扶養制度
保険加入者の配偶者や子供などが、保険加入者本人1人の保険料のみで保険制度を利用できる制度です。
扶養に入るための収入の基準は
- 収入が無い
- 年間収入が130万円以下
となっています。
傷病手当金
業務外でのケガや病気で仕事ができない状態になり、仕事を休んだ場合に支給されるのが傷病手当金す。
支給の条件や額は以下のようになっています。
業務外の事由による病気やケガの療養のため仕事を休んだ日から連続して3日間(待期)の後、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。
全国健康保険協会
全国健康保険協会のHPの説明がわかりやすいです。
【支給される傷病手当金の額】
もらえる期間は最大1年6ヶ月です。
簡単にまとめると
業務外のケガや病気で仕事ができなくて長期間休んだ場合、4日目以降給料の2/3が最長で1年6ヶ月もらえる
とりあえずはこのような理解でOKです。
出産手当金
出産のために会社を休んだ時にもらえるのが出産手当金です。
被保険者が出産のため会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合は、出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間を対象として出産手当金が支給されます。
全国健康保険協会
支給額については上記の傷病手当金と同じ計算方法になります。
これらの制度の中身をふまえて、国民健康保険と健康保険の違いを見ていきましょう。
国民健康保険とは?
自営業者や一定以下の規模の個人店に勤める従業員が加入するのが国民健康保険です。
特徴は以下の通りです。
- 保険料は全額自分で支払う
- 保険料額は前年の所得に応じて計算される
- 扶養制度が無いため、家族が増えた場合保険料が増える
- 傷病手当金がもらえない
- 出産手当金がもらえない
健康保険とは?
一定以上の規模の個人店や会社に勤める従業員が加入するのが健康保険です。
特徴は以下の通りです。
- 保険料は自分と勤務先が半分ずつ払う
- 保険料額は給料の額によって変わる
- 扶養制度があるため、家族が増えても保険料は同じ
- 傷病手当金がもらえる
- 出産手当金がもらえる
明らかに国民健康保険よりも健康保険の方が優秀です。
年金に続いて「社会保険完備」というのが魅力的な条件だということがわかりますね。
まとめ
- 社会保険完備とは、厚生年金と健康保険に加入できることを意味している
- 厚生年金に加入していると、未加入と比べて将来の年金受給額が倍以上になることもある
- 国民健康保険よりも健康保険の方が圧倒的に優秀
国民健康保険と健康保険の違いを簡潔に表にしてみます。
国民健康保険 | 健康保険 | |
対象者 | 個人事業主 アルバイト 個人店勤務の従業員 | 一定規模以上の事業所の従業員 |
出産手当金 | なし | あり |
傷病手当金 | なし | あり |
保険料の額 | 前年の所得に応じて | 給料額に応じて |
保険料の負担 | 全額自己負担 | 半額は勤務先負担 |
扶養制度 | なし | あり |
社会保険に加入していると金銭的メリットは大きいです。
全ての情報はお伝えできていませんが、この記事だけでも重要ポイントはマスターできます。
別記事で転職の際の社会保険の手続きについてもまとめてあります。
転職活動や日々のお金のやりくりにお役立ていただければと思います。
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