料理人の年収が低いということは多くの人の共通認識だと思います。
その原因・理由について多くのメディアやネット記事では長時間労働が挙げられていますが、論点少しがズレています。
- なぜ長時間労働になってしまうのか?
- なぜ長時間労働なのに低年収になるのか?
その説明が必要です。
そこで今回は
- 飲食業界は売上をあげるために必要な費用が多く、利益率が低い
- 料理人が働きたいのは仕事がマニュアル化&自動化された大企業ではなく、しっかりと魅力的な料理を作っている飲食店
まずこのことを前提として、料理人の職場が長時間労働になってしまう理由と、年収が低くなる理由をわかりやすく解説していきます。
結論から言うと
- 飲食業界は利益率が低く儲かりにくい業界
- 個人店では料理人=正社員なので、固定費が多くなりがち
- 固定費を抑えるために個人店オーナーは少ない料理人に長時間労働をさせる
- 残業代が適切に支払われないため、長時間労働の割に給料が少ない
こういうことになります。
飲食業界の特性と、経営者の自分勝手な考えが根本原因なのです。
しっかり理解するため、ひとつずつ順に説明していきます。
厳密にいえば多店舗展開している個人事業主など様々な飲食店がありますが、わかりやすくイメージするために【大企業と個人店】という視点で考えていきます。
飲食業界は売上をあげるために必要な費用が多く、利益率が低い
利益率とは?をカンタンに説明
まず利益率の説明をします。かなり簡略化してますので、イメージだけつかめればOKです。
売上−費用=利益
利益÷売上×100(%)=利益率
例えば
売上100万円−費用90万円=利益10万円
10万円 ÷100万円×100(%)=利益率10%
これが利益率です。
利益率が高い会社、低い会社
業種によって必要な費用は全く違うので、利益率もかなり差があります。
全業種で考えると、10%あれば良い方というのが一般的な認識です。
例えば航空業界は利益率が低い代表的な存在です。
飛行機や人件費、空港使用料、メンテナンス費用など、莫大な費用が必要だからです。利益率は5%ほどです。
逆に利益率が高くて有名なのがクレジットカードのVISAです。
決済ネットワークサービスを提供している世界的大企業ですね。必要な費用が少なく、利益率は60%ほどあります。
費用が多くかかりそうな会社と少なくて済みそうな会社のイメージができそうですね。
飲食業界の利益率
では、飲食業界はどうでしょうか?
飲食業界も利益率が低い部類に入ります。5~8%が多いです。
- お店の賃貸料
- 食材費
- 人件費
- 水道光熱費
このあたりが主な費用になります。飲食店には必要なものばかりです。
お店の賃貸料
飲食店は人が集まる場所でなければ売上が伸びにくいので、どうしても賃貸料が高くなります。
食材費
食材は腐るという特性があるため、ロスが出やすく費用が高くなる原因になっています。
水道光熱費
料理を作るのに欠かせません。特に資源を輸入に頼る日本では電気代とガス代が高いですね。
人件費
ここがポイントです。飲食店と言っても大企業と個人店で違いが出てきます。このあと詳しく説明していきます。
ここまでの話をまとめると、
飲食業界は確かに利益率が低い。しかしもっと利益率が低い業界もある。つまり飲食業界と同水準かそれ以下の年収の業界もある。
問題なのは、飲食業界の正社員が突出して労働時間が長いことです。
ここから大企業と個人店の人件費について見ていきます!
【人件費の中身を比較】大企業はアルバイト(変動費)で個人店は正社員(固定費)が多い
人件費を深掘りしていくと、料理人が長時間労働になる原因が見えてきます。
大企業の人件費
飲食系の大企業では、料理作りを極力マニュアル化&自動化をして、アルバイト(未経験者)でも常に同じ仕上がりにできる料理を提供しています。
そのため、大企業は正社員(固定費)を少なくして、アルバイト(変動費)でも回せるお店が多いのです。
飲食業界の大企業では、正社員は料理人ではなくマネージャー(アルバイトを管理して指示を出す)なのです。
個人店の人件費
一方個人店は、大企業と同じやり方では勝てませんので料理にオリジナリティや質の高さが必要になります。
そのため、アルバイト(変動費)だけでお店を回すことなど出来ず、技術や経験のある料理人を正社員(固定費)として雇うことになります。
その結果
人件費として大企業はアルバイト(変動費)が多く、個人店は料理人の正社員(固定費)の割合が多くなる
これが大企業と個人店の人件費の違いです。
変動費は調整できますが、固定費は簡単には減らせません。
一度雇うと「今月ヒマだから休んでね。給料はナシね。」なんてできませんね。
少しでも利益を多く残すために、個人店では料理人という固定費を最小限に抑える必要があります。
その結果少ない料理人に長時間労働してもらう、ということになります。
悪質なのは
残業代が支払われるケースは稀で、ほとんどはサービス残業
だということです。つまりタダ働きさせています。
個人飲食店のオーナーは労働基準法を守る意識が低い傾向にあります。
罰則が弱く、訴えられるリスクを考慮しても違法にサービス残業させた方が得だからです。悔しいですが現実です。
しかし、、、
料理人はしっかりと料理を作りたい。だから料理人になった。大企業ではダメなのです。
例えば
- デニーズ
- サイゼリア
- 吉野家
- くら寿司
- 王将
料理を全てイチから手作りしている大企業などありません。
良い悪いではなく、仕事内容が全く違います。
実力をつけた料理人が、経営を学ぶために大企業で働くのはメリットがあるかもしれません。
しかし、これから腕を磨きたい若い料理人が大企業で働くメリットは少ないでしょう。調理技術はほとんど身に付きません。
だから料理人はしっかり料理を作れる個人店で働きます。
そして標準以下の給料で残業代の出ない長時間労働、という結果につながります。
まとめ
- 飲食業界は利益率が低く儲かりにくい業界
- 個人店では料理人という固定費が多くなりがち
- 固定費を抑えるために個人店オーナーは少ない料理人に長時間労働をさせる
- 残業代が適切に支払われないため、長時間労働の割に給料が少ない
これが結論となります。
比較的良好な労働環境のなかで、料理人としての実力や経験も身に付く優良飲食店が少しずつ増えてきています。
飲食店特化の転職エージェントを利用することで、そのような優良飲食店にアプローチすることができます。完全無料で利用できます。
料理人が長時間労働で年収が低い理由を理解した上で、どのように料理人人生を歩んで行くべきなのか?
それとも他の生き方を選ぶのかを考えていきましょう。
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