ホワイト企業というと、どのような会社をイメージするでしょうか?
特徴をあげてみると
- 残業が少ない
- 残業代が確実に出る
- 月に6〜8日確実に休める
- 基本給が高い
- パワハラが無い
- 従業員の勤続年数が長い
抽象的な基準ですが、これらが全て当てはまればかなりのホワイト企業ですね。
飲食業界はブラック業界です。
私自身の15年の料理人キャリアを振り返っても、せいぜい1つか2つに当てはまれば良い方で、3つに当てはまる職場すらありません。
今回の記事では
- 「ホワイトな飲食店」はほとんどが大企業
- 料理人というのは高い調理技術を持った職人であり、大企業飲食店の仕事内容ではその技術が身に付かない&発揮する場もない
- 現実的に一流の料理人になるにはブラック飲食店勤務は避けられない
これらを詳しく解説していきます。
飲食業界のホワイト企業はほとんどが大企業
ホワイト飲食店が大企業に多い理由
上記のホワイト企業の特徴を多く満たす飲食店が無いわけではありません。
いくつかのサイトが独自の基準でホワイト企業ランキングを作っていますが、そこにランクインする企業というのは様々なデータの公表を義務付けられている大企業ばかりだということがわかります。
大企業はコンプライアンス(法令遵守)の意識が高い傾向があります。
社会からの目や株主の目をとても気にするということです。
- 残業代未払い
- 短期退職が多い
- 過労死レベルの長時間労働
- 上司のパワハラやセクハラ
このようなことは、会社の評価が下がる直接的な原因になります。
その結果利益も減少し、株価も下がってしまう。
そうならないために、大企業ほどホワイトな職場環境を整えようとしています。
個人店にホワイト飲食店が少ない理由
大企業と違って個人店や小規模事業者は、離職率や平均年収などを公表する義務がありません。
さらに出資者(開業にあたってお金を出した人)がオーナーだけというケースも多く、「ブラックなことをして会社の評価を下げるな!」という外部の目もありません。
若い世代のオーナーシェフの中には労働環境の改善に前向きな人も増えてきていますが、ベテランシェフなどはその意識が低く「自分がルールだ」と考えている傾向がありますので要注意です。
大企業飲食店の特徴
商品・サービス内容
ホワイトと言われる大企業の飲食店でどのような料理やサービスが提供されているかというと
- 誰が作っても質が一定に保たれる料理
- 大衆に求められるような低価格の料理
- 当たり外れのない均一的なサービス
このような大企業飲食店の特徴は「つまらないもの」のように見えてしまいますが、これらは確実に世の中で必要とされています。
飲食業界の大企業として有名なのは
- マクドナルド
- サイゼリア
- すかいらーく
- 吉野家
- 王将
これらの企業はファンも多く、日常的に利用する方も多いでしょう。
実態はわかりませんが、飲食業界の中では「ホワイト企業」と言われている企業でもあります。
しかしこれらの企業は、安定した利益をあげるために低コストで大量の外国産食材を仕入れたり、加工済みの食品を利用しています。
良い悪いではなく、人々の需要に応えるためにそのような手段を選んでいます。
仕事内容は「調理」ではない
そのような大企業の飲食店の従業員に求められるのは高い調理技術ではなく、コストを下げて利益を出し、株主に還元することなのです。
具体的には
- 食材原価の管理
- 広告費の管理やキャンペーンの考案
- 部下であるパート・アルバイトスタッフの管理
といったことを数字で管理する能力が求められます。
「調理」をすることはほぼありません。
既製品を使うとかのレベルではなく、包丁もガス台もないようなキッチンで作業のように料理が作られていくことも多い。
その「管理をする」のが仕事です。
料理人=高い調理技術を持つ職人
厳選したこだわりの食材を使い、高い調理技術で魅力的な料理をつくる
これが料理人の醍醐味でしょう。
ですが、ホワイト飲食店と言われる大企業ではこの能力を身に付ける場も発揮する場もありません。
誰でも同じような仕上がりになる料理でなければ、全国展開するような飲食店のメニューにはできないからです。
大企業ホワイト飲食店で身に付くこと
- 店舗の運営状況を数字で管理する経営力
- 部下のシフト管理や育成などのマネジメント能力
- 広告やキャンペーンなどの営業力
これらは個人店ではなかなか身に付きません。
どれもいずれ独立して生計を立てようと考えている料理人にとっては必要な能力ですので、大企業飲食店での勤務経験自体は意味があるのです。
大企業ホワイト飲食店だけでは身に付かないこと
大企業の飲食店では、未経験者でも常に同じクオリティの仕上がりにできるマニュアルがあり、その通りに作業するだけです。
もしくはその「管理をする」のが仕事です。
- 高い調理技術
- 本当に美味しいものを感じる味覚
- 質の高いものに触れて磨かれる感性
このような料理人に必須な能力が身に付くことはありません。
自分は将来何をしたいのか?
行き当たりばったりのキャリアにしないために、将来像を明確にしなければいけません。
- 企業の中で出世を目指したい
- 大規模な多店舗展開をして、経営者として飲食業界で生きていきたい
このような目標ならば新卒から大企業ホワイト飲食店だけで働き続けるという選択は正しいでしょう。
しかし
- オーナーシェフとしてレストランを独立開業したい
- フリーランスの料理人として活動したい
このような目標があるのなら「見習いからずっとホワイト飲食店で働く」というキャリアでは目標の実現可能性は低いでしょう。
少なくとも数年間は質の高い料理を出すレストランで働く覚悟が必要です。
ハイレベルなレストラン(ミシュラン星付き店など)の多くは個人経営もしくは小規模事業者であり、ブラック率が高いという現実がある。
この問題が難しいのは
ブラックな労働環境だとしても、技術や経験を身に付けたい料理人はミシュラン星付き店などでの勤務を希望する
ということです。
ブラック飲食店が無くならないのは従業員にも問題がありそうですね。
残念ながら現実的に、料理人として一流の技術や経験を身に付けたければブラック店勤務は避けて通れそうにありません。
それを受け入れる覚悟が必要になります。
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まとめ
- 「ホワイトな飲食店」はほとんどが大企業
- 料理人というのは高い調理技術を持った職人であり、大企業飲食店の仕事内容ではその技術が身に付かない&発揮する場もない
- 一流の料理人になるにはブラック飲食店勤務は避けられない
飲食業界の中にもホワイト企業はあるでしょう。
しかしその数は圧倒的に少なく、個人店や小規模事業者に限って言えば皆無という印象すらあります。
私の15年間の料理人人生の中でも、ホワイト飲食店だったと思える職場はゼロです。料理人仲間からの話でも聞いたことがありません。
料理人というのは高い調理技術を持った職人です。
職人として生きていくためには、ブラックな環境を生き抜く覚悟を持たなくてはいけません。
今後はミシュラン店と言えどもホワイトな職場になっていくのか、それとも職人の世界は例外だという認識が続いていくのか。
少しでも料理人を志す若者が生きやすい世界になって欲しいですね。
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